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(1) 民事再生とは

(イ) 民事再生とは
民事再生とは、経営破綻のおそれがある場合にとることが可能な法的再建手続であり、原則として裁判所によって監督委員が選任され、裁判所や監督委員の監督のもと、債務者自らが事業主体の地位ないし財産の管理権を維持継続したまま、事業ないし生活の再建を行っていく点に大きな特色があります。民事再生法の趣旨は、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めることなどにより、債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって債務者の事業または経済生活の再生を図ることです。このように、債務者の再建のための手続であることから、債務者自身が主体的に手続に関与することになり、再生計画案等を作成するのも、原則として債務者や裁判所ではなく、再生債務者自身がすることになります。再生計画の内容としては、大まかに言えば、債務の一部カットとカットされた残債務につき分割弁済にする(具体的には、例えば、債務を7割カットしてもらい、残りの3割を5年間で毎年1回ずつの分割払い)というのが一般的です。
(ロ) 再建計画の主体
民事再生においては、原則的に再生債務者が事業主体となって再建をすすめます。
しかし、財産の処分や借財等について、裁判所の許可を必要とする旨定められることがありますし(民事再生法第41条)、再生計画認可後も、再生計画に従った弁済が義務付けられ、監督委員の監督を受けることになります。万が一再生計画の実行を怠った場合には、計画取消し、破産手続への移行といった事態にもなりかねません。
また例外的なケースですが、再生債務者の財産管理又は処分が失当である場合には、管理命令が発令され、管財人によって財産の管理、処分がなされるという可能性も存在します(民事再生法第66条)。
このように民事再生においては、原則として経営主体の交替はないといっても、それは単なる経営の自由を意味するのではなく、再建の責任を課された上での経営権の留保である点に注意が必要です。
(ハ) 手続開始の要件
再生原因とは、民事再生手続開始の要件となる事実です。会社の経営状況が破綻してからでは、再生が困難になるので、再生原因は破産原因よりも緩やかに定められています。因みに、破産原因は、支払不能(破産法第15条1項)、または法人の場合の債務超過(破産法第16条第1項)の事実ですが、再生原因は、破産原因そのものの事実がなくても、債務超過および支払不能のおそれがあれば申立てができます。それ以外にも、事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときにも申立てができます。このように、再生原因には、二種類の原因が定められております(民事再生法第21条第1項)。
(a) 「債務超過」とは、債務者である会社が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいい、「支払不能」とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいますが、民事再生では、このようなおそれがある場合には再生原因となり、民事再生の申立てができます。
(b) 「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」とは、債務の弁済資金の調達は不可能ではないものの、その調達をすることによって、本来の事業の運転資金に不足が生じたり、事業に必要な資産を売却せざるを得なくなるような場合をいいます。これは、破産原因のおそれがある場合とはいえなくても、事業を継続していく上で支障があるような事実が生じた場合にも、民事再生の適用を受けさせようとの配慮から定められたものであり、これを原因とする申立ては事業者に限定されており、債権者からの申立てはできません(民事再生法第21条第2項)。
(ニ) 各種債権の取扱い
(a) 第三者が再生債務者に対して有する債権
再生事件においては、債権者の再生債務者に対する債権について、「共益債権」「一般優先債権」「再生債権」「開始後債権」の区別がなされ、再生手続における取扱いが異なり、特に、弁済の方法がそれぞれ異なることになります。
1) 「共益債権」には二種類のものがあります。一つは、再生手続申立て後に生じた債権のうち、再生手続開始前に、資金の借入れ、原材料の購入その他再生債務者の事業の継続に欠くことのできない行為によって生じた請求権で、かつ「共益債権」とする旨の裁判所の許可を得るか、承認権限を付与された監督委員の承認によって「共益債権」とされたものをいいます(民事再生法第120条)。二つ目は、再生手続開始後に生じた債権で、再生手続の遂行費用の請求権等、再生債権者の共同の利益のために生じた債権や、再生債務者の業務、生活等に必要な費用の請求権等、再生債務者の事業遂行上必要な債権です(民事再生法第119条)。
「一般優先債権」とは、先取特権その他、共益債権以外の優先権のある債権であり、再生手続開始後のものであっても、租税債権や民法上の先取特権の付いた債権(例えば従業員の賃金等労働債権)等がこれにあたります(民事再生法第122条)。
「共益債権」と「一般優先債権」は、再生手続によらないで随時弁済ができます(民事再生法第121条第1項、第2項、第122条第2項)。すなわち、再生計画により債権の一部をカットしたり、弁済時期を先延ばしにすることはできません。
2) 「再生債権」とは、民事再生手続開始決定前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であり、共益債権又は一般優先債権を除いた債権をいいます(民事再生法第84条第1項)。
例えば、取引先が再生債務者に対して有する売掛金請求権や、銀行の貸付金返還請求権などが典型的なものですが、再生債務者に対する財産上の請求権であれば、金銭債権に限られません。再生債権は、再生計画の定める弁済方法に従って弁済することになります。したがって、弁済金額及び弁済時期については、すべて再生計画でどのように策定されるかに関わってきます(民事再生法第85条第1項)。このように、再生債権の個別的な権利行使を原則的に禁止しておりますので、再生計画に基づかない弁済等は無効となります。
なお、再生債権であっても、再生債務者の財産に存する特別の先取特権、質権、抵当権、商事留置権によって担保された債権は別除権付債権とされ、別除権のない再生債権とは区別して扱われます。別除権のある再生債権は、再生手続によらないで別除権を行使することができますが(民事再生法第53条第1項、第2項)、別除権を行使しても弁済を受けることができない債権額の部分については、その部分のみ、再生債権者として再生手続に参加することができます(民事再生法第88条)。
3) 「開始後債権」とは、再生手続開始後の原因に基づいて生じた財産上の請求権のうち、共益債権、一般優先債権又は再生債権を除いた債権をいいます(民事再生法第123条)。開始後債権については、再生計画による弁済期間が満了した後でなければ弁済等をすることができません(民事再生法第123条第2項)。
(b) 再生債務者が第三者に対して有する債権
再生債務者が第三者に対して有する売掛金、貸付金等の債権回収を行うことは自由です。
(ホ) 担保権の取扱い
再生債務者の財産に対して有する担保権(特別の先取特権、質権、抵当権、商事留置権)のことを民事再生手続上「別除権」といい、再生手続とは関係なくその権利を行使することができます(民事再生法第53条)。例えば、会社財産に抵当権をつけていれば、それは再生手続の有無を問わず実行できるという意味です(ただし、後述のように担保権の実行中止命令や、担保権消滅許可の申立てがされる場合はあります)。別除権を行使しても、なお被担保債権に不足額が生じてしまう場合には、その不足額を再生債権として届ける必要があり、この分については再生計画に従って弁済を受けることとなります。これは、再生手続を簡素化するため、別除権を有する優先債権については再生手続による制約をしないで自由に権利行使ができるようにしたものですが、その反面、それ以外の無担保、非優先の一般債権を再生債権とし、再生計画で再生債権の権利を変更することにより(例えば、再生債権額の免除の割合を決めたり、7年の分割弁済にするなどの弁済猶予期間や弁済方法を定める等)、再生債務者の事業再建を図ることにしたものです。
(へ) 預り品等他人所有物の取扱い
再生債務者に属しない財産については、たとえ再生債務者が保管している場合であっても、その権利者が再生手続に関係なく取り戻すことができ、このような権利のことを取戻権といいます(民事再生法第52条)。再生手続の基礎となる財産が、再生債務者の所有に属する財産であることは当然のことであり、再生手続が開始された場合でも、取戻権を有するものは、いつでも取り戻すことができる旨を明らかにしたものです。例えば、再生債務者が他社の製品を委託販売しているような場合、賃貸借契約終了に基づく再生債務者の目的物の返還などがこれに該当します。