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(9) 手続の概要


(イ) 事前相談
実務上、手形の不渡り処分を避けるために手形の満期の前に必ず弁済禁止の保全処分を発令してもらいたいということや、資金繰り上、銀行口座に振り込まれる入金につき銀行による相殺を回避するために入金日の前日までに民事再生の申立を受理してもらいたいことがありますが、これらの予定日の直前になっていきなり申立書を裁判所に提出しても、これに不備があると申立が受理されなかったり、弁済禁止の保全処分をすぐには発令してもらえない場合があります。
そこで、こうした事態を防止するために、できれば申立の受理や弁済禁止の保全処分の発令をしてもらいたい予定日の1週間前までに裁判所の担当部に連絡を入れて、事前相談をしておくべきです。
このときに、申立書に不備があれば補充するように指摘を受けたり、また、予納金の額を教えてもらうことができます。
(ロ) 民事再生の申立
(a) 申立書の記載事項
民事再生手続開始の申立書の記載事項は以下のとおりです。
実務上、以下の事項につき記載漏れがある場合、申立を受理するにあたって補正を求められることがあり、補正をしない限り申立を受理してもらえない場合があります。
したがって、手形の不渡りを避けるために満期日の直前に申立をする場合に、申立を受理されず、弁済禁止の保全処分も発令されないという最悪の事態も起り得ますので、予定日の1週間前までに事前相談をしておくことが望ましいのです。
1) 申立人の氏名・名称及び住所
2) 申立の趣旨
3) 再生手続開始の原因となる事実
4) 再生計画案作成の方針についての申立人の意見(できる限り、予想される再生債権者の権利の変更(債務の減額)及び従業員・大口債権者など利害関係人の協力の見込みを明らかにしなければならない)
5) 申立人が法人の場合、その目的、役員の氏名、出資の状況、その他法人の概要
6) 申立人が事業を行っている場合、その事業の内容・状況、営業所・事務所の名称・所在地、従業員の状況
7) 申立人の資産・負債の状況、債権者の数
8) 申立人の財産に関してなされている他の手続または処分で申立人が知っているもの
9) 申立人の従業員で組織する労働組合があるときは、その名称、主たる事務所の所在地、組合員の数、代表者氏名(労働組合がない場合は、従業員の過半数を代表する者の氏名、住所)
10) 社債管理会社がある場合、その商号
11) 申立人について外国倒産処理手続がある場合、その旨
12) 申立人が法人の場合で、法人の設立または目的である事業について官庁その他の機関の許可があったときは、その官庁その他の機関の名称、所在地
13) 申立人および代理人の郵便番号、電話番号、FAX番号
(b) 申立書の添付書類
民事再生手続開始の申立書に添付して提出すべき書類は以下のとおりです。
実務上、添付漏れがある場合、申立を受理するにあたって提出を求められることがあり、提出しない限り申立を受理してもらえない場合があります。
したがって、手形の不渡りを避けるために満期日の直前に申立をする場合に、申立を受理されず、弁済禁止の保全処分も発令されないという最悪の事態も起り得ますので、予定日の1週間前までに事前相談をしておくことが望ましいのです。
1) 申立人が個人の場合、住民票の写し
2) 申立人が法人の場合、定款・寄付行為、登記事項証明書
3) 債権者一覧表(一般債権者、担保権付債権者、リース債権者、公租公課債権者、従業員に区分して、債権者の氏名・名称、郵便番号、住所・所在地、電話番号、FAX番号、債権の内容・種類、額を記載します。)
4) 財産目録(勘定科目ごとに明細を添付)
5) 直近3期分の貸借対照表、損益計算書
6) 申立人が事業を行っている場合、申立日の前1年間の資金繰り実績表、申立日の後6か月間の資金繰りの予定表
7) 申立人が労働協約を締結し、または、就業規則を作成している場合、その労働協約、就業規則
8) 申立人の財産にかかる登記・登録事項証明書
9) 申立人が取締役会設置会社の場合、取締役会議事録
10) 代理人を選任して申立を行う場合、委任状
(ハ) 債務者審尋
再生手続の申立てがあった場合は、裁判所は保全処分を命ずることができますが(民事再生法第30条)、裁判所は、保全処分を審理する場合に、申立書や添付書面に加えて、再生債務者や関係者から事情を聞くことがあります。そのようなときに行われるのが債務者審尋です。債務者審尋では、会社が民事再生に至った経緯や、財産状況、負債状況や再生計画案の作成の方針などを確認するために行われます。その際に、申立書の内容や、添付書類の内容についての質問もなされます。
通常は会社の事業内容や経理等に詳しい代表者や経理関係者と申立代理人が債務者審尋に出席します。
(ニ) 保全処分
再生手続の開始決定がなされると、再生債権者は再生計画の定めるところによらなければ弁済等を受けることができず、債権者への弁済が禁止されますが(民事再生法第85条第1項)、再生手続開始の申立てがあっただけでは弁済禁止の効力がないため、開始決定がなされるまでは債権者から債務の弁済を迫られることになります。もし、開始決定までの間に債権者から弁済を強要されたり、担保の提供を強要されたりすると、一部債権者への偏頗弁済になったり、さらには再生債務者の財産が散逸して事業継続が困難となるおそれが生ずるため、裁判所は、再生手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立て又は職権によって、再生手続開始決定がなされるまでの間、債務者の業務及び財産に関し、仮差押、仮処分、その他必要な保全処分を命じることができます(民事再生法第30条)。
具体的には弁済禁止、担保提供禁止の保全処分、不動産の処分禁止、借財禁止の仮処分などが考えられますが、実際上は、弁済禁止及び担保提供禁止の保全処分が多用されており、それだけで十分な効果が期待できる事例が多いのです。その理由は、手形を振り出している債務者が、弁済禁止の保全処分を受けることによって手形の決済が禁止されるので、債権者から手形の提示を受けても、弁済禁止の保全処分を理由に手形決済をしなくても不渡処分を受けないで済みますから、銀行取引停止処分を免れます。また、支払期日の迫った債務についても弁済が禁止されます。このように、再生手続開始の申立時に弁済禁止の保全処分がなされると、開始決定後も弁済が法律上当然に禁止されており、結局、認可された再生計画に基づく支払までの間は再生債権について支払をしなくても良いことになりますので、再生債務者にとっては、その間かなり資金の余裕が出てくることになり、事業再建の見通しが立ちやすくなります。このように、保全処分の中で最も重要なものは、弁済禁止の保全処分ですから、再生債務者において、再生手続開始の申立てと同時に、弁済禁止の保全処分を申し立てるのが通常です。弁済禁止の保全処分とは、再生債務者が再生債権について弁済を行ってはならないという内容の処分ですが、共益債権や一般優先債権はこの処分とは無関係ですし、例えば10万円以下の少額の債権については、保全処分の中で例外が設けられることもあります。
この弁済禁止の保全処分が発令されますと、再生債務者は弁済を停止しなければなりません。またこれに反する弁済は、債権者が弁済禁止の保全処分がされたことを知っていたときは再生手続の関係では無効になります(民事再生法第30条第6項)。
そのほか裁判所は、開始決定後は強制執行等の手続きが中止ないし失効することになっていることから(民事再生法第26条)、申立時においても同様に、債務者の財産に対する強制執行等を一律に禁止する包括的禁止命令を出すこともできます(民事再生法第27条)。また、債務者の財産に担保権を有する者は別除権者として再生手続によらずにその権利を行使することができますが(民事再生法第53条第1項、第2項)、例えば事業継続に必要不可欠な財産が担保権の行使によって失ってしまい、到底事業継続ができないというような事情がある場合などには、一定の要件の下に担保権の実行手続中止命令(民事再生法第31条)を出すこともできます。これは一時的な中止命令にしかすぎませんので、将来的には、担保権者と協定を結んで担保権を実行されないようにすることが必要となります。もし協定ができないような場合には、最終的には当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して担保権消滅の許可の申立てを行う(民事再生法第148条)ことも考えなければなりません。
保全処分や禁止命令、中止命令は、いずれも再生手続開始決定前に、債務者に事業継続のチャンスを与えるとともに、事業継続に必要な財産が散逸してしまうことを防止するための手続です。
(ホ) 監督委員の選任等
民事再生手続が原則として再生債務者の主導で行われる手続であることから、再生債務者を後見的に監督するために、裁判所は監督命令を発令して、監督委員を選任することができるとされていますが、実務上、東京地裁や大阪地裁などでは、民事再生の申立がなされた後、開始決定前に保全処分の発令と同時に、監督委員が選任される運用となっています。
監督委員は、裁判所の目となり、耳となり、足となって、独自に債権者に対する意見照会を行うなどの方法で、再生手続の開始要件の存否を調査し、開始決定に関する意見書を裁判所に提出したり、再生計画案に関する意見書を裁判所に提出したりします。
その他の監督委員の職務として、特に重要なものが、次の同意権や否認権の行使などです。
裁判所は、監督委員の事前の同意を得なければ申立人がすることのできない行為を指定するのが通常です。
具体的には、実務上、後記のような行為(ただし、常務にあたるものは除外されます)が要同意行為に指定されています。申立人としては、要同意行為として指定されたものをよく念頭においておき、事前の同意を得るのを忘れないように注意しなければなりません。尚、事前の同意を得ずに行為をした場合、その行為の相手方が要同意行為であること、または、同意を得ていないことを知らなかった場合を除き、その行為は無効となります。また、手続違反として、場合によっては手続が廃止されることもあり得ます。
(1) 申立人が所有する財産に係る権利の譲渡、担保権の設定、賃貸その他一切の処分(債権の取立ては除外されます)
(2) 無償の債務負担行為又は権利の放棄
(3) 財産の譲受
(4) 借財、手形割引又は保証
(5) 双方未履行の双務契約に係る契約の解除
(6) 裁判手続の申立、その取下げ
(7) 和解及び仲裁合意
(8) 取戻権、共益債権及び一般優先債権の承認
(9) 別除権の目的財産の受戻し
(ヘ) 民事再生手続開始の申立ての棄却
再生債務者に再生原因が認められないときは棄却されますが、再生原因がある場合でも、予納金を納付しないとき、裁判所に破産手続等が係属しその手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき、再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき、不当な目的で民事再生開始の申立てがなされたとき、その他申立てが誠実になされたものでないときには、申立てが棄却されることになります(民事再生法第25条第1号ないし第4号)。
(ト) 債権者説明会
民事再生の申立をした後、できるだけ早期に、申立に至った事情・経緯、業務・財産の状況、再建の方針などを債権者に説明するために、債権者説明会を開催します。
この債権者説明会には監督委員も出席して、その状況を裁判所に報告することになります。さらに、監督委員は債権者説明会の状況を踏まえて、再生手続を開始するのが相当か否かの意見書を裁判所に提出し、これを受けて裁判所は再生手続開始決定の是非を判断することになります。
したがって、債権者説明会を開催しない限り、手続の開始決定が発令されない場合もあります。
実務上は、申立後1週間以内に開催するのが望ましいでしょう。
(チ) 再生手続開始の決定
再生原因の存在が認められ、その他上記(ホ)に述べた申立ての棄却事由がない場合、裁判所は再生手続開始の決定をします(民事再生法第33条第1項)。それと同時に、今後の再生手続の予定事項として、再生債権の届出をすべき期間、再生債権の調査をするための期間が定められます(民事再生法第34条第1項)。
再生手続開始決定がなされると、それに伴い、再生債務者に対する破産手続、他の再生手続、特別清算の開始の申立ては禁止され、さらに、既になされている破産手続や強制執行は中止され、特別清算手続はその効力を失います(民事再生法第39条)。ただ、会社更生手続がなされていた場合には、上記とは全く反対に、民事再生法の申立てはできませんし、会社更生手続の申立てがなされますと既になされていた民事再生手続は中止されます(会社更生法第50条第1項)。これは、会社更生手続が、株主や担保権者も含めてなされる厳格な手続であることから、再生手続より更生手続を優先させることにしたものです。
また、再生手続開始後において、裁判所が必要あると認めるときは、再生債務者が行う財産の処分や譲受、借財などについて裁判所の許可を得なければならないと定めることができます(民事再生法第41条)。
このように再生手続開始後も、裁判所の監督に服することもありますし、監督委員の同意や報告をしなければならない行為もありますので、再生債務者が主体となって再建を行うといっても、裁判所の監督の下で行うことになります。
(リ) 再生債権の届出
再生手続に参加しようとする再生債権者は、再生手続開始決定と同時に定められた再生債権を届出をすべき期間(債権届出期間)内に、再生債権の内容及び原因、議決権の額などを届け出なければなりません。また、別除権のある再生債権については、別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる額等を裁判所に書面で届け出る必要があります(民事再生法第94条)。なお、再生債権者は債権額に応じて議決権を有しますが、期限付きで無利息のもの、定期金債権、その他非金銭債権、外国通貨で定められた債権、将来の債権などの特殊な債権の債権額の算定については、特則が定められています(民事再生法第87条第1項各号)。
再生手続を円滑に進めるためには、再生債権を確定させた上で再生計画案を作成する必要があることから、債権届出期間内に届出がなされない場合にはその再生債権の権利を失うことになりますが(民事再生法第178条)、①再生債権者の責めに帰することが出来ない事由によって債権届出期間内に再生債権の届出をすることができなかった場合には、その事由が消滅した後1か月以内に、②届出期間経過後に生じた再生債権については、その権利の発生した後1か月以内に、③再生債権者がその責めに帰することができない事由によって、届け出た事項について他の債権者の利益を害すべき変更を行う場合もその事由が消滅した後1か月以内に、それぞれ追完や変更を行うことができます。ただし、再生計画案を決議に付する決定がなされた後は追完や変更をすることはできません(民事再生法第95条第1項ないし第5項)。
このように、債権届出期間内に再生債権の届出を怠った場合、原則として債権が失効し、再生計画による弁済が受けられなくなってしまいますので注意が必要です(民事再生法第178条)。
(ヌ) 簡易再生、同意再生
(a) 簡易再生
簡易再生とは、再生債権の調査、確定の手続を省略し、再生計画案を債権者集会の決議を付することによって、簡易迅速に再生計画を成立させることができる手続で、債権届出期間経過後、一般調査期間の開始前に申立てをすることができます(民事再生法第211条第1項)。
その申立てについては、届出再生債権者の総債権について裁判所が評価した額の5分の3以上の届出債権者が、再生計画案並びに再生債権の調査及び確定の手続省略について同意した旨の同意書面を提出した場合に、簡易再生を行うことができますが、実際上は、民事再生手続自体が短期間で処理されていることから、簡易再生の申立てはほとんどなされていません。
(b) 同意再生
同意再生とは、すべての再生債権者が、債権調査及び確定手続を省略することに同意し、かつ、再生計画案についても同意している場合に、裁判所が同意再生の決定をし、再生手続を終結させることです(民事再生法第217条以下)。
簡易再生の場合は5分の3以上の同意が必要でしたが、同意再生の場合は全ての届出再生債権者の同意が必要となります。同意再生の申立てについても、簡易再生と同様、きわめて申立て件数が少なく、ほとんどなされていないのが実情です。
(ル) 債権調査、確定
(a) 認否書の作成
再生債務者は、届出のあった再生債権について、その債権の存在自体並びにその債権額(議決権)について認めるか否かを記載した認否書を作成し、一般調査期間前に裁判所に提出します。さらに、債権者側から届出のなかった再生債権についても、再生債務者がその債権の存在を知っている場合には、自認する債権の内容を認否書に記載して裁判所に提出しなければなりません(民事再生法第101条第1項、第3項)。再生債務者が再生債権の存在を知っている場合には、再生債権として再生計画に従って処理させることが必要だからです。
(b) 債権調査、確定
届出をした再生債権者は、再生債務者の作成した認否書の内容を閲覧し、自己の債権が認められたか否か、また他人の債権がどのように認否されているかを確認し、裁判所が定める調査期間内に異議を述べるかどうかを決断します。再生債権者は、自己の債権が再生債務者によって認められない場合には、異議を出して争わなければ再生債権として認められないので、再生手続への参加をすることができなくなります。また、再生債権者は、自分の債権だけでなく、他人の債権についても異議を出すことができます(民事再生法第104条第1項)。
認否書において再生債務者が認めており、かつ届出債権者から異議がない再生債権については、その内容や議決権の額が確定することになります。そして、確定した再生債権は再生債権者表に記載され、確定判決と同一の効力を有します(民事再生法第104条第1項ないし第3項)。
一方、認否書の内容に異議が出された場合には、債権確定のための査定の裁判手続へ進むことになります(民事再生法第105条)。
(ヲ) 再生債権の確定のための裁判手続等
再生債務者が認否書において認め、他の届出債権者からも異議が出されなかった再生債権は、そのまま確定しますが、再生債務者が否認した再生債権、または届出債権者から異議が出た再生債権については、当該債権を届け出た者は一般調査期間の末日から1ヶ月以内に、異議を出した当該再生債務者及び当該異議を述べた届出再生債権者全員を相手に、裁判所に査定の申立てをしなければなりません(民事再生法第105条)。この査定を申し立てないと、異議を出された届出債権は、再生債権として認められないからです。
査定の申立てを受けた裁判所は、再生債権の存否及び債権額等の内容を定める裁判を行い(民事再生法第105条第4項)、裁判書を当事者に送達します(民事再生法第105条第6項)。
この査定内容に不服がある者は、裁判書の送達の日から1ヶ月以内に、異議の訴えを提起し、この裁判の中で再生債権の内容が決定され、確定することになります(民事再生法第106条第1項ないし第6項)。
このように、再生債権の存否やその性質、数額、議決権等に争いのある場合に備えて、再生手続の中で、通常の訴訟手続よりも簡易、迅速な確定手続が設けられています。
(ワ) 再生債務者の財産等の調査
(a) 財産目録及び貸借対照表の作成
再生債務者は、再生手続開始後遅滞無く、その有する一切の財産について、再生手続開始時における価格を評定しなければならず、これに基づいて、財産目録及び貸借対照表を作成して裁判所に提出しなければなりません。また、裁判所が必要と認めるときは、財産の評定にあたっては、評価人を選任することができます(民事再生法第124条第1項ないし第3項)。
再生債務者が履行可能な再生計画案を作成するためには、まず再生債務者の財産状態を正確に把握することが必要不可欠なものです。
(b) 報告書の作成
再生債務者は、再生手続開始後遅滞なく、再生手続開始に至った事情、再生債務者の業務及び財産に関する経過及び現状、役員に対する損害賠償請求権の査定の裁判や役員らの資産に対する保全処分を必要とする各事情、その他再生手続に関し必要な事項に関する報告書を作成し、裁判所に提出しなければなりません(民事再生法第125条第1項第1号ないし第4号)。これらの重要な情報は、再生債権者に開示される必要があるので、財産評定に基づいて作成された財産目録・貸借対照表とともに、再生手続開始の申立てから2ヶ月以内に裁判所に提出しなければなりません(民事再生規則第57条第1項)。
(カ) 再生計画案の作成
(a) 再生計画案は主として、今後どのような事業を行っていくかという事業計画を見据えた上で、再生債権者の債権を減免してもらい、残額の債権についてどのように弁済を行っていくのかという弁済計画が主要な骨子となっています。その上で、再生計画案を再生債権者の決議に付し、再生債権者によって可決された場合に裁判所は認可決定をすることになります。それによって再生計画が有効となります(民事再生法第174条第1項)。
再生計画の立案が再生債務者及び申立代理人の最も重要な職責ですが、会社の収益力の分析、倒産状況に至った原因の分析を行って、再建の方法を模索することになります。
(b) 再生計画案の絶対的必要的記載事項として、再生債権の権利の変更条項と共益債権及び一般優先債権の弁済に関する条項があります(民事再生法第154条第1項第1号、第2号)。
再生計画案の中で最も重要な事項は、再生債権の権利の変更に関する条項です。これは、再生債権の減免を受け、どれくらいの割合の債権を弁済するか、そして減免された債権をどれくらいの期間で弁済するかということを再生債務者自身が提案することになります。再生債権の権利の変更は、再生債権者間の平等を満たすことが必要ですので、権利の変更に関する一般的基準を定めた上で、それに基づき権利の変更をしなければなりません。もっとも、衡平を害しない場合には、例えば少額の再生債権者への返済等については、一定の限度で不平等な扱いをすることも許されています(民事再生法第155条第1項、第156条)。
さらに、権利の変更について考慮しなければならない点は、清算価値保障原則です(民事再生法第174条第1項第4号)。つまり、民事再生手続は、破産手続によって債権者が受けるであろう清算価値以上の弁済を受けることによって、再生債務者の事業の再生を図るというものですから、再生債務者の資産の清算価値以上の弁済をしなければなりません。
弁済期間は、特別の事情がある場合を除き、再生計画認可決定確定の日から10年を超えない期間で定めるべきものとされていますが(民事再生法第155条第3項)、実際上は5年ないし7年とする計画案がほとんどです。
(c) そのほか、相対的必要的記載事項、任意的記載事項、説明的記載事項があります。例えば、会社の事業部門の一部を他社に譲渡するということが考えられます。本来事業譲渡には、株主総会の特別決議等、会社法所定の手続を踏む必要がありますが、再生手続開始後に会社が事業譲渡を行おうとする場合は、裁判所の許可で足りることとされています。この許可の制度は、再生債務者の企業価値が衰えないよう、迅速に事業譲渡を行うために設けられた規定であり、事業の再生に必要であると認められる場合にのみ裁判所が許可することとされています(民事再生法第42条)。これを任意的記載事項として再生計画案に記載し、再生計画案の認可決定が確定すると法的な効力が生じます。
(ヨ) 監督委員の意見書
再生債務者から再生計画案が提出された後、ほぼ1週間前後に、監督委員は再生手続や再生計画の適法性、再生計画の実現可能性等を吟味して、認可相当か否かの意見書を作成し、裁判所に提出します。この意見書は、再生計画案とともに再生債権者に送付されることになります。
(タ) 債権者集会(又は書面投票)
再生計画案が裁判所に提出されますと、民事再生法第169条第1項各号に該当しない場合には、再生計画案を決議に付する旨の決定(付議決定)を行います(民事再生法第169条第1項)。再生計画案の認可決定を得るためには、再生債権者による決議を経る必要があるからです(ただし、同意再生の場合は再生債権者による決議を経る必要はありません。)。
裁判所は、付議決定において議決権行使の方法を決めなければなりません。議決権行使の方法には、債権者集会の期日において議決権を行使する方法、書面等投票により議決権を行使する方法、これら両者を併用する方法の三つの方法があります(民事再生法第169条第2項各号)。平成14年改正により併用型が新設され、東京地方裁判所では併用型が原則とされています。
再生計画案の可決要件は、議決権者(債権者集会に出席し、又は書面等投票した者)の過半数の同意があり、かつ議決権者の議決権総額の2分の1以上の同意とされています(民事再生法第172条の3第1項)。議決権の数は再生債権の性質や額によって決められますが(民事再生法第87条)、原則として債権額に近い数字と理解しておいて問題はないでしょう。
(レ) 再生計画の認可
再生計画案が再生債権者の決議によって可決された場合、裁判所は所定の不認可事由がない場合には、再生計画の認可の決定を行います(民事再生法第174条第1項)。
裁判所が再生計画の認可を行わない不認可事由とは、再生手続又は再生計画について法律の規定に違反し、かつその不備を補正することができないとき(ただし、法律の規定に違反した場合でも、軽微であるときは不認可事由とはなりません。)、再生計画が遂行される見込みがない場合、再生計画の決議が不正に成立した場合、再生計画の決議が再生債権者の一般的利益に反するとき(例えば、返済額が清算価値以下の場合にはこれに該当します。)の例外的な場合です(民事再生法第174条第2項第1号ないし第4号)。
再生計画は裁判所の認可決定後不服申立期間(民事再生法第9条)の経過によって確定し、その効力を生じます(民事再生法第176条)。
(ソ) 再生計画の実行
再生債務者は確定した再生計画に従って、速やかにその内容を遂行し、監督委員が再生計画の実行を監督します(民事再生法第186条第1項、第2項)。
万が一、再生債務者が再生計画の履行を怠った場合には再生計画の取消決定がなされ(民事再生法第189条第1項第2号)、再生計画が遂行される見込みがないことが明らかになったときは再生計画の廃止決定がなされます(民事再生法第194条)。しかし、再生債務者等の申立てにより、計画取消決定や廃止決定を行うのではなく、一定の要件と手続によって再生計画の変更を求め、再生計画の続行を求める機会も与えられています(民事再生法第187条)。それでも実現できない場合には、計画の取り消しによる破産手続への移行が行われることになります(民事再生法第250条)。
(ツ) 債権者説明会
民事再生法上は、裁判所が再生計画案の議決方法として債権者集会の期日で決議することを選択した場合に債権者集会の開催が必要的になりますが、これ以外の場合であっても、再生債務者が適宜債権者説明会を開くことが予定されています(民事再生規則第61条)。
債権者説明会の開催は必要的ではありませんが、例えば、民事再生の申立てを行った後に、任意に債権者説明会を開催して、会社の現状と民事再生手続の選択に対する理解を求め、事後の再生計画案への同意への布石とすることが考えられます。
債権者説明会にあたっては、再生債務者の代表者、申立代理人が出席の上、謝罪、会社の財務状況の経過及び現状、民事再生手続を選択した理由や、今後予定する再建計画の概略、民事再生手続そのものやスケジュールの説明を行います。説明会に際しては民事再生申立書の添付資料等、説明に必要なものを債権者に配布することになるでしょう。
債権者説明会の主催者は債務者であり、債権者説明会には監督委員も出席して債権者からの情報を得ることが求められています。これ以外にも債権者への説明が必要なときは、適宜説明会を開催して、債権者の理解と協力を得ることが必要となります。
なお、再生債務者が債権者説明会を開催したときは、その結果の要旨を裁判所に報告することが必要です(民事再生規則第61条第2項)。